top of page

研究の興味

​人間活動が野生生物に与える影響と生物多様性保全を軸に研究しています。メインの対象は鳥類ですが、時にほ乳類、両生類、昆虫類、草本類も研究対象としています。

騒音や光が動物に与える影響 

産業革命以来の急速な技術革新の副産物に人為騒音や人工光があります。これらの環境汚染物は今や世界中に普遍的に存在していますが、近年これらが動物の聴覚や視覚の利用を妨げ、その影響は動物個体の生理機能や行動から群集、生態系レベルにまで及ぶことが分かってきました。当研究室では、騒音や人工光が動物に与える影響を、個体の行動から群集までの様々なレベルで、操作実験や野外実験を通して多角的に調べています。騒音や人工光の生態的影響を明らかにすることは世界的な至上命題と言えます。しかし、日本ではこの分野の研究が全くと言ってよいほど行われていません。当研究室は日本で唯一、この分野を専門として世界最先端の研究を展開しています。

DSC_3846-1.JPG
DSC_6494.jpg

これまでに、自動車騒音が野生のフクロウ類の採食効率を低下させ、その影響は道路から少なくとも120mまで及ぶこと(Senzaki et al. 2016 Sci Rep)、自動車騒音による忌避・注意力散漫効果が雌のカエルの音走性行動を阻害し、この影響は長期間騒音に晒された経験によっても消えないこと(Senzaki et al. 2018 Funct Ecol)、騒音は。直接・間接的な影響経路を介して、鳥類やバッタ類等の音声を利用して生活する動物だけでなく、聴力を持たないトンボ類の群集構造を変えること(Senzaki et al. 2020 Proc R Soc B)、騒音と人工光がアメリカ大陸の142種類の鳥類群集の繁殖開始時期や繁殖成績に悪影響すること(Senzaki et al. 2020 Nature)などを明らかにしてきました。今後も様々な動物・アプローチを用いて、騒音や人工光の生態的影響を明らかにしていく予定です。

アンブレラ種・象徴種と生物多様性保全

生態系ピラミッドの頂点に君臨するアンブレラ種の保全を通して生物多様性を保全するという試みは、我が国をはじめ世界各地で一般的に行われています。しかし、驚くべきことに、アンブレラ種の保全が生物多様性に役立つかどうかの科学的妥当性は十分議論されていませんでした。そこで北海道苫小牧地方の分断化された湿原景観において、アンブレラ種とされるチュウヒの保全がその他の生物の保全に役立つのかどうかを調べました。その結果、チュウヒの生息は植物や小型哺乳類の種数や個体数を指標しないが湿地性鳥類の種数や個体数を指標すること(Senzaki & Yamaura 2016 Wetland Ecol Manage)、チュウヒの繁殖成績の高い生息地の保全は湿地性鳥類の繁殖成績の高い生息地の保全につながること(Senzaki et al. 2015 Biol Conserv)、チュウヒの繁殖成績は周囲の人工構造物の面積と採食地面積に大きく左右されること(Senzaki et al. 2017 J Wild Manage)を明らかにしました。さらに、アンブレラ種と同等に保全に利用されることの多い象徴種のタンチョウを利用した保全活動の方が、その生息地である湿地面積に着目した保全活動やバードウォッチング施設の設置を伴う保全活動よりも、市民の支払い意志額(その活動に払っても良いと考える金額)が高いことを明らかにしました(Senzaki et al. 2017 Biol Conserv)。

DSC_5292_2264.JPG
DSC_3748.jpg

鳥類の個体数変化・ステータス評価

近年、多くの国産鳥類が減少していることが明らかになっています。それにもかかわらず、保全に必要な基礎情報を十分に利用できる種は多くありません。そこで、こうした情報を収集し発表することに取り組んでいます。これまで、極東固有種であるケイマフリは国内に14コロニー・約1200羽が生息していること(Senzaki et al. 2015 Waterbirds)、日本で繁殖するウミネコやオオセグロカモメが過去40年で大きく減少したこと(Senzaki et al. 2020 Bird Conserv Int)、極東に生息し生態情報が極めて少ないシマクイナが日本で繁殖していること(Senzaki et al. in press Wilson J Ornithol)などを明らかにしてきました。

DSC_1107.jpg

今後展開を予定している研究トピック

学生や共同研究者の力を借りながら以下のトピックについてはゆっくりと研究を展開していく予定です。

 

・海鳥の分布予報開発(現在はヒメクビワカモメをモデルに予備解析を行っています)

・音声を利用したディスプレイ

・渡り鳥の渡り行動​

DSC_9571.JPG
DSC_4058.jpg
bottom of page